寿昌寺の如意輪観音坐像(じゅしょうじのにょいりんかんのんざぞう)
県指定有形文化財・彫刻 平成26年3月25日指定
臨済宗不老山寿昌寺本堂に安置されている本尊である。右脇壇には宝冠釈迦如来坐像も安置されている。
今は臨済の禅寺である不老山寿昌寺は、古くは天台寺院であったと伝え、玄界灘を望む不老山の山上に康保4年(967)台山和尚が創建されたといわれている。松浦党の雄と呼ばれた志佐氏の菩提寺である。
その寿昌寺の本尊である如意輪観音菩薩坐像は、頭・体根幹部を前後二材から彫りだしている寄木造りの仏像である。
体内背面に墨書銘があり、墨書には康永3年(1344)に志佐有とその子の定を檀那として、仏師幸心により造立されたことが確認されている。本像が制作される直前の康永元年(1342)には、志佐氏は海洋神的性格を持つ熊野三所権現を再興していて、本像にも熊野那智如意輪堂本尊のイメージが投影されている可能性が高い。また、現在、本像は左に像高78センチメートルの毘沙門天像、右に72.2センチメートルの不動明王像を脇侍としている。この脇侍を従える観音は、慈覚大師円仁を海難から救った菩薩とされる。現在の脇侍像は室町時代の制作であり、この頃に海にまつわるあらたな霊験が付与されたのであろう。
更新日:2019年04月01日